【読書感想文】『欧州ビジネスに出会う』ヤン・セーゲルフェルト (著)

アート&思考

Hallå! (スウェーデン語でこんにちは。英語のHelloです!)

現在はスウェーデン在住でスウェーデン語を勉強しながら日々奮闘しているアラフォーです。

2026年を迎え、一人旅を久々にしたのはいいものの、どうやらインフルエンザになってしまったようで早々寝込んでしまいました。皆さんは無理なく健康を維持してお過ごしでしょうか。

さて、私の旅ですが、目的地はドイツのドレスデン。ドレスデン空港を利用するのは意外と飛行機高いよ、という話を聞いたので、スウェーデンはストックホルムからベルリンまで飛び、ベルリン・ドレスデン間は高速バスを利用しました。

ストックホルムからベルリンまでは飛行機で約1時間30分。これは読書するのにちょうどいいと考えた私は、2025年の秋から少しずつ読んでいた本を完読しようと思ったのでした。

本のタイトルは『欧州ビジネスに出会う』(2023年、ヤン・セーゲルフェルト (著)、 坂本オロフソン優子 (翻訳))。こちらの本を読み始めたのは、昨年、著者のヤンさんにお会いしたことがきっかけでした。読書が苦手の私でも抵抗なく読める、ページ数的の少ない本です(全145ページ)。それでも内容は濃く、読んでいて大変興味深いものでした。少しずつ読み進め、ようやく読み切ったので、感想と共にこちらの本をご紹介したいと思います。

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日本と他国の文化や生活・仕事環境の違いについて、日本人目線で書かれている本は珍しくないと思いますが、こちらの本では、日本の知見があるスウェーデン人目線で日本と欧州の違いが書かれている点が一番の魅力かと思います。著者ご自身の経験から、またご自身でリサーチした内容から、さまざまな例が挙げられており、どの例もビジネスの現場をイメージしやすくワクワクしながら読んでいました。

特に、 “欧米と日本のサービスレベルの違いについて” は、多くの日本人が海外を経験した時にショックを受けるのではないでしょうか。しかし、こちらの本には、そのような「あるある」が書かれているので、事前情報があれば「海外はこういうものだ」と無意識のうちに日本と同じサービスを求めるようなことはなく、サービスレベルの違いにショックを受ける必要もなくなります。むしろ、「そうそう、日本とはサービスの価値観が違うんだった」と、その違いを楽しめたり学んだりすることに意識が向くのではないでしょうか。

また、仕事環境に対する価値観についても書かれていて、欧米のやり方は日本ではなかなか生まれなさそうなアイデアが多いと思います。これをいいと思うかどうかは、読者によって意見は異なるかもしれませんが、日本のいいところを保ちつつ、他国の(他国では当たり前かもしれませんが日本では斬新な)アイデアも取り入れていけるような柔軟性が、日本のリーダーたちにも必要かと個人的には思います。

本著には書かれていませんが、例えば私自身の経験として、海外とビジネスをするにあたって、印鑑の使用をやめ、電子サインを取り入れた企業で働いたことが過去にありました。その一方で、海外とビジネスをしていながらも、印鑑はまだまだ使用するし、ファックスも現役バリバリ大活躍の企業で働いたこともありました。請求書についても、PDFなどの電子請求書のみは認めず、メールでの請求書送付に「加えて」、郵便手段を利用した原本の送付も必要な企業もありました。本著にもある “「知っているとよい」と「知る必要がある」” 情報について “欧米的な見方では、しばしば「知っているとよい」というのは、不必要で時間のかかることを意味します。欧米人は、ときどき苛立って、日本のビジネスパーソンは多くの情報を求めすぎると文句をいいます。” とありますが、先に挙げた請求書の例なんかも、「あるとよい」と「ある必要がある」と表現できるのではないでしょうか。電子請求書でいいという企業が存在するのであれば、どの企業もペーパーレスでやっていけませんか。それにもかかわらず、なかなか柔軟になれない環境では昔ながらの「原本対応」が重要だという暗黙の了解があります。もちろん、雑貨屋さんの独自のこだわりがあったり、法律的に原本でないとならないお堅い分野もあるでしょうが、私が指摘しているのはそういう分野ではないということを念の為付け加えておきます。

一方で、私が好きな日本の職場にある伝統は、職員同士が挨拶をし合うこと、また、メールのメッセージ内で天気や世間話を少し含めることで対面のチャンスがほとんどないクライアントとの距離を縮めることができて、仕事がスムーズになることなどです。私は、日本以外のオフィスで働いたことはないのですが(インターンシップを除く)、日本にある外資系で働いた際に、多くの従業員が出社して無言のまま自分のデスクに座り、仕事を始めていたのを見てショックを受けました。「挨拶って当たり前じゃないの?」と思う私は「古い」のかなぁとも感じました。ですが、よく「風通しがいい」と言われるような職場では、従業員同士も出社して自然な挨拶を掛け合っていました。メールについては、海外とのやり取りの時は本当に必要な返信だけが届きます。海外のクライアントがミスをしても、問題なく事がスムーズに進んでいたとしても、彼らが使うのは必要最低限の文言だけでした。ある意味、言い訳などもなくさっぱりしているとも言えるかもしれませんが、海外と繋がりたいと夢見ていた日本人として私は物足りなさを感じました。

さて、本著の内容に戻りますが、 “起業家精神” や “ウーマノミクス” についての章も、面白かったです。昨今、フェミニズムの考え方がトレンドで、メディアでは、強い女性像だったり、女性を差別するような発言に対して攻撃的なリアクションだったりを目にすることがありますが、本著で紹介されている女性起業家たちは、どこか冷静で、しかし野心家で、純粋にビジネスを楽しんでいるような印象でした。また、女性リーダーが増えてきていたとしても、今だに男性陣のネットワークの方が強いことを認めている女性リーダーもいました。現実を受けとめ、「何だったら自分にできるか」を考え、周りが何を言おうと自分を信じてそのアイデアを実践し成果を出す姿は素直にかっこいいと思えます。私がデンマークで暮らした時にも、男性がリーダーである環境が多そうだなという印象を受けました。私が働いた教育機関などでは女性がリーダーであることも自然に見えましたが、オフィス勤務を目指して就職活動をしていた時のリサーチでは、男性の方がまだ多いかなと思ったのを覚えています。今住んでいるスウェーデンでも似たような状況にありますが、(あくまで私が見てきた部分だけですが)スウェーデンの方が意識的に女性リーダーを増やしているような印象を受けました。女性が活躍できる社会であることがあえて強調されているかのように。

最後に、北欧と日本には “多くの共通点がある” ということにも触れつつ、北欧諸国の違いについても語られている章では、うなずくことも多く、楽しい読書時間であったことを強調したいと思います。

ヤン・セーゲルフェルト著『欧州ビジネスに出会う』は、さまざまな層がそれぞれに楽しめる本だと思います。仕事上、海外とのつながりがある方、将来管理職を目指している方、将来留学を目指している方、北欧や海外で将来働いてみたいと思う方、自分でビジネスを始めたいと思っている方、などなどたくさんの方々におすすめしたい本です。

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